本日はよろしくお願いします。
柳瀬さんは現在メカニックデザイナーとしてご活躍されていますが、プロのクリエイターになる前となった後で考え方など変化したことがあればお聞かせいただけますか?
柳瀬
そうですね、自分が発信したものが、世間の目に触れるので、そのデザインに対しての意見なり反応がダイレクトに返ってくることがあるんですね。
その反応が自分だけでなく、クライアントやほかのスタッフにも返ってくるという事も頭に置いて、仕事と向き合うようになりました。
作品をつくるとき(デザインをするとき)に、大切にされていることって何かありますか?
柳瀬
「発注者が求めているものを、100%デザインに反映させる。しかしこっそりと自分の好みを20%ほど忍ばせて、120%のものを目指す」
これは先輩デザイナーがインタビューで仰っていた言葉なんですが、この言葉のおかげで今もなんとかデザイナーをしていると思っています。
PROJECT HALのメンバーにとっては今回の作品がデビュー作となるのですが、柳瀬さんご自身が初めてメインで作品(デザイン)を手がけたときの印象や、つくり終えたときの感想はどのようなものでしたか?
柳瀬
メインのメカデザインを手がけたデビュー作品としては、会社員時代に参加したXbox用ゲームソフト『叢-MURAKUMO-』になると思いますが、ゲームショーでの発表時、ものすごく嬉しかった事を覚えています。
デザインをしているときはがむしゃらにギリギリまで作業していたので、完成させた直後はようやく休める!としか思いませんでしたが(笑)。
PROJECT HALの話を最初に聞いたときの印象と、どんな気持ちで参加を決意されたのかをお聞かせください。
柳瀬
TVCM用に制作するメカニックデザインは初めてのだったので、面白いと思いました。
やはり、普段と違うフィールドで仕事をするのはワクワクしますので、自分自身にとっても大変良いチャレンジでしたね。
今回、CMの中に「量産機になるな」というメッセージがあるんですが、主役機に込めた想いやコンセプトを聞かせてもらえますか。
また、デザインで特に凝ったポイントなどもあれば教えてください。
柳瀬
ハイエンドCGでアクションムービーを制作するということなので、可動して見栄えがいいバランスや、アップになっても画面密度が高くなるようなデザインを目指しました。
敵として量産機が登場するという前提があったので、主役機はミリタリーテイストを持ちながらも、しっかりとヒーローらしさを頭部のデザインに盛り込みました。
今回、PROJECT HALのメンバーとともに制作していった中で、印象に残っていることはありましたか?
柳瀬
普段プロに発注するやり方で、デザインを提出したんですが、想像以上に、皆さん粘り強く制作していて驚きました。
時間の厳しい中、気になるけど細かいから直さなくてもOKと言っていた部分も、直っていたり。
プロと同じクオリティへ近づけるために、何としてでも良いものをつくってやろうというような、鬼気迫るものを感じましたね。
現在、PROJECT HALのメンバーも日々プロになるために頑張っているんですが、柳瀬さんにとってプロとはどんな人のことでしょうか?
柳瀬
逃げない人。
どんなに締め切りが大変でも、仲間と意見が合わず喧嘩したとしても、その仕事を降りるにしても、会社に行かなかったり、連絡がつかなくなる事が一番迷惑をかける事です。
フリーになって、最初に先輩から教えてもらった大切なことですね。
今まさにプロ(クリエイター)を目指している学生、そしてこれからプロ(クリエイター)になるため、HALに進学を考えている皆さんへ向けてメッセージをお願いします。
柳瀬
色々な事に、チャレンジしてみてください。
CGムービー1つとっても、モデル、演出、立体、デザインと仕事は様々ですが、学生のうちに自分に合うことが見つけられたら、ものすごく幸せなことだと思います。
あと、授業は興味ないことでも、真面目に受けると良いと思います。
私自身、建築系の学校出身で毛色が全然違いますが、メカデザインにおいても思いがけないところで役に立っていたりしますので。
自分には関係ないと思っていることでも、発想のきっかけになったりしますので、若いうちは恐れずに視野を広げて挑戦していってください。
PROJECT HAL MECHANIC DESIGNER:
柳瀬敬之
京都府出身。建築系の学校で設計を学んでいたことから、メカの変形の構築も得意とするメカニックデザイナー。
フロム・ソフトウェア入社後『アーマード・コア2』の敵デザインなどを担当し、Xbox用ゲーム『叢 -MURAKUMO-』ではメインメカデザイナーを担当。
その後フリーのメカニックデザイナーとして独立。
『交響詩篇エウレカセブン』から、アニメ業界にもデザイナーとして本格的に関わる。
『機動戦士ガンダム00』のガンダムデュナメス、ガンダムキュリオス、ガンダムヴァーチェのメカニックデザインを担当しており、続く『機動戦士ガンダム00 -セカンドシーズン-』『劇場版 機動戦士ガンダム00』においてもメカニックデザイナーとして活躍。
その他メカニックデザインとして関わった作品は数多くアニメでは『テンカイナイト』『ファイアボール チャーミング』『攻殻機動隊ARISE』『革命機ヴァルヴレイヴ』『キャプテン・アース』『楽園追放 -Expelled from Paradise-』、ゲームでは『スーパーロボット大戦シリーズ』『メタルギアソリッド4』『メタルギアライジング』『ダライアスバースト』『スティールクロニクル』と続く。
業界内では「メカニックデザインに3DCGを取り入れたパイオニア」として知られている。
また、ゲームやアニメはもちろん、プラモデルやフィギュアのキャラクターデザインなども手がけ、現在も活躍の場を広げている。