CAR DESIGN

2012.8.18

未来への扉を開くのは 今つくっている作品の精度だ。

  • 御前裕司

    ダイハツ工業株式会社 デザイン部

大学、社会人を経てHALで学び、かねてから念願だったダイハツ入りを果たした御前裕司さん。 HAL時代にいちばん大切にしていたこと、そしてこれから本格的に向き合って行くカーデザインに賭ける熱い思いを語っていただいた。

待望のダイハツ入社は実はリベンジだった

2011年にダイハツに入社した御前裕司さんは、現在、新人研修中。勉強の日々だ。 「研修では工場のラインでものづくりの厳しさを目の当たりにし、ディーラーさんにお邪魔して販売について学び、さらにクルマの構造や制作の過程を学んで行きます。他の部の方とも交流があり、仲間もできますし、素晴らしい環境で学ばせてもらっています」 御前さんは、ご本人いわく「遠回りをして」ダイハツに入社した経歴の持ち主だ。 「大学を卒業して、福祉用具のデザインを手がける会社で働いていました。やりがいのある仕事でしたが、仕事柄高齢者向けの製品が多く、“自分と同世代の人に向けたデザインがしたい”という気持ちを抑えきれず、退職して2年間、HALで学び、そしてダイハツに入ることができました」 しかも、ダイハツを受けたのは再チャレンジだったという。 「大学を出た時に一度受けていたのですが、そのときはご縁がありませんでした。ですから自分が今こうして在籍させてもらっていることが、不思議でならないんです(笑)」 敗者復活で希望を勝ち取った人の言葉は、とても輝いている。

デザイン+プレゼン力世界を相手に仕事をすること

入社して、ものづくりのシビアさ、責任の重さを日々、痛感しているという。 「軽自動車ですからもちろん規格があり、限られた空間の中で繊細な表情をつけていけるということが驚きです。会社全体として、小さいクルマに特化した魅力を出そうという思いが明確にあり、全然ブレがないことが実感できます」 この先、世界中の自動車メーカーと競争が待っており、粛々と絵を描いていればいいというわけにはいかない。 「マレーシアやインドネシアから来られているスタッフの方とも接し、つたない英語でコミュニケーションしています。今の時代は、自分が描いたデザインの意図や特長を、しっかりプレゼンテーションできないと認めてもらえないと思います」 人を説得するためには、クルマのコンセプトをいかに的確に理解できているかが勝負になるだろう。

時間は有限。可能な限りとことん作品集をつくりこめ

HAL時代の御前さんは、どんな学生だったのだろう。 「年齢を重ねていて、学費も自分で出していたので、時間を無駄にしたくないという思いが強くありました。マンツーマンの指導もお願いし、非常に濃い2年間でした」 学校の授業だけで満足しては絶対にダメだと御前さんは強調する。 「スペックのいいPCがたくさんあって、紙もプリンターも使い放題の環境なんて、そうそうないですよ(笑)。作品づくりに時間を割くべきです」 最後に、見事に念願の企業に入社できた御前さんからメッセージをいただいた。 「もし第一志望に行きたいなら、自分の作品集の精度をとことん上げることです。就職の際、最初にはねられるのも作品集の質。今つくっている自分の作品に真剣に向き合うことで、未来の扉を自分で開いてください」

※卒業生会報誌「HALLO」66号(2012年6月発刊)掲載記事

御前裕司

ダイハツ工業株式会社 デザイン部

ダイハツ工業株式会社

設立は1907年と古く、百年以上の歴史を持つ自動車メーカーである。「もっと軽にできること。」のキャッチフレーズの下、ミライースやムーヴ・タントなど、低燃費で環境性能に優れた軽自動車を中心に製造販売を行っている。エコカー免税車の展開においては、他社の追随を許さない充実のラインナップを誇っている。