GAME

2015.8.12

壁を乗り越えたことで掴んだ夢。 HALでの経験が、社会人2年目での活躍につながっている。

  • 髙田 美里

    株式会社セガネットワークス/プログラマー

    ゲーム制作学科/2013年卒業

第一志望だったセガに入社し、現在はセガネットワークスでプログラマーとして勤務する髙田さん。 順風満帆に見えるその道のりだが、現在の場所へ辿り着くまでには知られざる苦労があった。 「女性初の総理大臣」から「ゲームクリエイター」へ―髙田さんの夢の変遷と挑戦の足跡に迫る。

  • 『Shining Force Cross EXLESIA Zenith』©SEGA

  • 『Shining Force Cross EXLESIA Zenith』©SEGA

  • 『Shining Force Cross EXLESIA Zenith』©SEGA

母に言われた一言が夢を目指すきっかけになった

2013年3月にHALのゲーム制作学科を卒業した髙田美里さん。第一志望だったという株式会社セガに就職し、現在はグループ会社である株式会社セガネットワークスでプログラマーとして働いている。「仕事が楽しくてたまらない」という髙田さんの人生は、一見すると順風満帆そのもの。しかし、HALに入るまでには波瀾万丈があった。 「以前に抱いていた将来の夢は、女性初の総理大臣。そのため最初は大学を目指して勉強していました。ところが、志望校に落ちてしまったのです。そのとき、母に一喝された言葉が『将来何になりたいのか。改めて考えてみなさい』というもの。泣きながら『ゲームをつくりたい』と答えました。ゲームは昔から好きだったのですが、具体的に将来の仕事として考えたのはこのときです」 目標を定めてからの行動は早かった。ゲームクリエイターになるための学校を調べ、テレビCMが印象的だったHALに締切寸前で入学。4年間の学生生活が始まった。「もしあのとき志望する大学に入学できていたら、ゲームに関してはただのユーザのままで終わっていたと思う」と笑う。 無事に入学を果たした髙田さんだが、入っただけでクリエイターへのレールが引かれるほど学業は甘くなかった。「趣味で絵を描いていたので、当初はデザイナーを志望していた」そうだが、周囲にはイラスト上手な同級生がずらり。自分の実力不足を痛感させられたとき、髙田さんが出会ったのが「プログラマー」という新たな職種だった。

未経験の壁を乗り越えた先に憧れのセガへの入社が待っていた

「それまで文系でしたし、プログラムは未経験。でもやってみると面白かったのです。自分が書いたコードに対してすぐにリターンが返ってきて、それがちゃんと動いたときの喜びは最高でした」 とはいえ、ゼロからはじめた髙田さんにとってプログラムはまさに未知の世界。決して得意ではなかったプログラムの課題のため、遅くまで学校に残ったことも。同級生があっさりと課題を終わらせる中、どうしても仕上がらずに泣いた日もあったという。その体験が、現在の社会人生活にも活きていると髙田さんは語る。 「会社に入って、辛いって思ったことがないんです。それはたぶん、学校の方が大変だったから(笑)。誰かに泣きついたからといって、ヒントはくれても答えは教えてもらえない。だから、とにかくがむしゃらに頑張り続けましたね」 セガを選んだのは、担任の先生がセガ出身だったのがきっかけ。現在はグループ会社であるセガネットワークスにて、スマートフォン向けゲームの開発に携わっている。 「現在はNPC(プレイヤーが操作できないキャラクター)のAIや、3Dモデルのパーツを切り替えて表示できるようにするためのビューワー開発などを行っています。セガもセガネットワークスも研修がしっかりしていますし、先輩も上司もすごく優しく、とても良い会社だと思います。会社が好きというよりも、もう愛していますね(笑)」

単なる歯車にならないようしっかり発言できるプログラマーに

社会人になってから2年弱。チームでゲーム開発をする上で、髙田さんが強く感じているのが「人間力」の大切さだ。 「私が思う人間力とは、誰かに助けを求められたときに進んで手を差し伸べられる力のこと。それを実感したのが、入社後に入った最初のチームです。客観的に見て、私はまだそこまで技術力は高くありません。だから、チームでもわからないことがあったときには、上司に質問していました。たぶん忙しかったはずなのに、上司は嫌な顔ひとつせず丁寧に教えてくれたんです。また仕事以外の部分でも、飲み会でのスタンスの取り方まで教わりました(笑)。本当に器の大きな方で、尊敬しています」 プログラマーという職種は、ともすれば技術力優先の仕事にも思われがちだ。しかし、プロジェクトが巨大化する現代では、それだけで円滑にそしてクオリティの高い仕事を進めていくのは難しいと髙田さんはいう。 「ゲーム制作ではプランナーやデザイナーなど他の職種とも関わります。彼らがつくりたいものが本当に納期通りつくれるのか、しっかりと議論して着地点を見つけられる発言力もまた、プログラマーに必要な能力だと感じています」 黙って言われたことだけをやるのでは単なる歯車になってしまい、結果的に同じチームのメンバーにも迷惑をかけることになる。そこで必要とされるのが、異なる意見を尊重しながらも現実的な仕様に落としこんでいく調整力だ。これこそが、髙田さんが目指す「人間力」である。

「今後はマネジメントなど、プログラム以外のことにも挑戦したいと思っています。そのためにはまず尊敬する上司のように器を大きくして、より良いチームづくりに貢献できる人を目指したいですね」 たゆまぬ努力で夢を勝ち取った髙田さん。彼女の後を追いかけてゲームクリエイターを目指す後輩にこうアドバイスする。 「努力したものは必ず結果が出るので、課題をあきらめずに最後まで全力でやること。そして自分の短所を早めに見つけて、潰すか長所に変える努力をすることが大切です」 誰よりも努力してきた髙田さんだからこそ、その言葉には重みがあった。

髙田 美里

株式会社セガネットワークス/プログラマー

ゲーム制作学科/2013年卒業

HAL東京の一期生として入学。ゲーム制作学科でプログラムを学び、2013年より株式会社セガに勤務する。入社後はアーケードゲーム『Shining Force Cross EXLESIA Zenith』などの開発に携わり、現在はグループ会社のセガネットワークスでスマートデバイス向けゲーム制作を行う。

株式会社セガネットワークス

2012年7月設立。スマートデバイス向けコンテンツ及びサービスを全世界に向けて展開。総合エンターテインメント企業である「セガ」のソフト資産を活用した「ぷよぷよ!!クエスト」から、「チェインクロニクル」シリーズなどのオリジナルタイトルまで、多彩で良質なコンテンツを通じて、ユーザに感動体験を提供している。 ※ 2015年4月に株式会社セガと合併。株式会社セガゲームス セガネットワークス カンパニーとして新たにスタート。本文中の社名は取材当時のものです。