MUSIC

2020.10.21

“音”に対する飽くなき探求心が 耳と心を惹きつけるラジオCMを生む

  • 林 貫志

    株式会社ヒッツコーポレーション プロダクションマネジャー/レコーディングエンジニア

    ミュージック学科/2018年卒業

常に探し続ける、運命の恋ならぬ「運命の声」

―2019年、林さんがプロダクションマネジャー、音響効果として参加し、制作されたのが、金鳥のラジオCM『G作家の小部屋』シリーズ。当CMは、2019年の『ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS』総務大臣賞/ACCグランプリを受賞した。成功の鍵となったのは、最高の声に出会うための飽くなき探求心だったという。 ラジオCMは耳からの情報のみなので、音の質次第では作品の世界観を壊したり、逆に視聴者をぐっと引き付ける可能性もある。だから、音に対する好奇心や探求心はとても大切にしています。今回も信頼する声優さんにお願いすれば、楽にいいものが目指せたと思いますが、あえて素人にこだわり、100人以上の声を聴きまくりました。そうして、小説家・町田康先生の素晴らしい声に出会えた。声の仕事が未経験だったからこそ、町田先生ならではのリアリティが存分に発揮され、それが作品の世界観にぴったりハマったことが、今回の受賞につながったと思います。

withコロナの録音・編集業務をいち早く可能に

―そして2020年、林さんが新型コロナウイルス対策として新たに着手したのが、オンラインで音声録音・編集ができるサービス『TEREC』の開発。緊急事態宣言が発令された4月には早くもリリースに至っていたというから驚きだ。 弊社主催の音楽コンテスト『eo Music Try』の決勝を2月に予定していたので、社内ではかなり早い時期からコロナ対策を始めていました。密なイメージがある録音スタジオは敬遠されやすいので、自宅からも参加できる録音・編集システムの開発は急務。そこで、弊社のモットー「スピード命」に則り、部品づくりからではなく、既存ツールを組合せる方法で開発を進め、着手から約1ヵ月で『TEREC』が完成しました。きっかけはコロナでしたが、世界のどこでもハイクオリティな録音・編集ができるというメリットは、コロナ禍が終息しても、多くの現場で重宝され続けるはず。僕もこれから『TEREC』で世界中の人とお仕事ができるかもと思うとワクワクします。

HALでの学びが音楽業界への道を開いた

―最後に、これから音楽業界を目指す後輩へメッセージをもらった。 授業でコンテストに応募したことがきっかけで、初めてラジオCM制作の楽しさを知り、そこから担任の先生に勧められたインターンシップ先であった、今の会社に就職をしました。 HALは専門分野以外も学べますし、学科を超えた学びがあります。ゲーム分野の同級生に頼まれて『日本ゲーム大賞』に応募する作品のゲームミュージックを制作し、そのゲームが見事受賞したこともいい思い出です。 先生の授業は業界を経験してきたプロだからこその楽しさがあり、いつもプロの現場を見せてもらっているようでした。特別講義で世界的なアニメーション会社のクリエイターから話が聞けたことも興味深かったです。 思い返すと、HAL在学中はきっかけにあふれていました。学科や学年を超えて協力し、制作に没頭できる環境があるので、行動してみること、挑戦してみることで、入学時に考えていなかった、新しい道も見えてきます。興味を持ったらまずは行動してみる、先生に相談してみることを、徹底して、楽しむ精神を忘れずに学生生活を謳歌してください。

金鳥ラジオCM『G作家の小部屋』シリーズ

金鳥『ゴキブリがうごかなくなるスプレー』『ゴキブリがいなくなるスプレー』『コンバット』のCMとして制作され、2019年『ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS』総務大臣賞/ACCグランプリを獲得。芥川賞作家の町田康氏がゴキブリでありながら大作家である「先生」に扮し、インタビュアーとユニークなやりとりを展開する。

『eo Music Try』

関西2府4県で活動するアーティストを対象に毎年開催されている関西最大級の音楽コンテスト。2008年からスタートし、これまで『KANA-BOON』や『ヤバイTシャツ屋さん』などの人気アーティストを輩出している。

『TEREC』

プロ用録音機材を1ボックスに収納してレンタルするオンライン録音・編集サービス。放送局の生中継技術とWEB会議アプリを組み合せ、ハイレベルな録音・編集・再生を可能に。アフターコロナの革新的ニュースタンダードサービスとして注目されている。

林 貫志

株式会社ヒッツコーポレーション プロダクションマネジャー/レコーディングエンジニア

ミュージック学科/2018年卒業

音楽制作の道を志しHALに入学。在学中に応募した『JFNラジオCMコンテスト』で見事優秀賞を受賞し、プロの現場で大きな刺激を受けたことをきっかけに、ラジオCM制作の道へ進む。卒業後は、担当の先生の推薦によりインターンとして採用された株式会社ヒッツコーポレーションに入社。大日本除虫菊株式会社(金鳥)や江崎グリコ株式会社など、様々な有名企業のラジオCMの制作に携わる。また同社が主催する関西最大級の音楽コンテスト『eo Music Try』の運営も担当し、人気アーティスト輩出の一翼を担うほか、高品質音声でのオンラインリアルタイム録音・編集サービス『TEREC』の開発を行った。

※卒業生会報誌「HALLO」74号(2021年1月発刊)掲載記事

株式会社ヒッツコーポレーション

ラジオCM制作や音楽制作など制作プロダクションとしてのサービスや、音楽アーティストのパブリシティ権の活用、マネジメントサポートサービス、また関西最大級の音楽コンテスト『eo Music Try』主催など幅広く行っている。