CAR DESIGN
2023.3.27
HALで知ったカーモデラーという仕事。 日産が近い未来に発表するクルマを担う、充実の日々。
山内 健司
日産自動車株式会社 グローバルデザイン本部 第一プロダクトデザイン部
カーデザイン学科/2018年卒業
日産の未来を形づくる
現在、海外向けの高級車ブランド「インフィニティ」の開発部署に所属して、主に先行開発と呼ばれる4~6年後に発売する自動車のデザインに携わっています。デジタル化が進み、求められるクルマの機能が変わっていく中で、「インフィニティ」においても未来の自動車像を日々追求し、試行錯誤をしながら新車開発に取り組んでいます。 入社から今年で6年目になりますが、これまでに電気自動車や、先日発表されたコンセプトカーの「Nissan Max-Out」など、色々な種類クルマの開発に携わってきました。 私が担っているカーモデラーという仕事は、カーデザイナーが描いたスケッチをベースに、工業用粘土(クレイ)を使って立体にしたり、3DCGを使ってコンピュータ上で立体化したりするものです。粘土を手作業で削ったり盛ったりしたりしながら、5mにも及ぶクルマの実物大のモデルをつくれることが、とても面白いですね。クレイに限らず、デジタルによるモデルづくりにも挑戦しており、現実とバーチャルの世界を行き来しながら創作を行うことに、とてもやりがいを感じています。
試行錯誤から得られるかけがえのない喜び
実際の業務では、開発コンセプトをもとにデザイナーが絵を描き、その隣でまずはデジタルモデリングを行います。1日に何回も立体を修正しながら、よりカッコよく見えるバランスを探していきます。初めから正解はなく、たくさんのトライが必要な段階ですが、デジタルでは実物のモデルに比べ、短い時間内に多くの可能性を試せるメリットがあります。来たかも!というところで、次はクレイでの立体化に移ります。しかし、これも1度では到底うまくいかず、またバランスを探します。スタートに戻ることはありませんが、積み上げては壊し、また違うやり方で積み上げては壊す、これを繰り返しながら形に対する考え方を整理しながら、最後には誰が見てもカッコいいと思う形に、なんとか漕ぎつけることがモデラーの役割です。苦労もありますが、この経験が自分の成長に繋がっていることを実感できますし、実際に製品になって世の中に出て行くことに、とても喜びを感じています。 より良いデザインを実現するためには、日頃から身の回りにある工業製品のデザインをよく見るようにしていますね。伝統工芸品や手づくりの製品が好きなのですが、クルマのデザインにも役立つよう、例えば椅子や建築物なども注目するようにしています。街で気になるデザインを見かけたら、自分だったらどういう形にするかを考えるようにしたり。少しずつの積み重ねで仕事に活かせることが多々ある、と思っています。
自動車メーカー出身の先生に、何でも聞ける刺激あふれる環境
小さい頃から手を動かすことが大好きで、エンジニアかデザイナーに憧れていました。それから、プロダクトの花形である自動車をつくる仕事を目指すようになりました。地元の高専で学んでいた機械加工や、CADの経験から何か発展できないかとも考え、都心という立地も魅力だったHALに入学しました。 入学前は手を動かして何かを形づくることができる職種は大変少なく感じていましたし、モデラーという職種も知りませんでした。しかし授業を通して、自分の考える形を整理して立体にできるモデラーという仕事を深く知るうちに、自分自身が思い描いていたモノづくりにとても近いことに気づきました。 HALは実際に大手自動車メーカーをはじめ業界に勤めていた方々が先生なので、いつでも何でも聞けることが大変勉強になりました。4年間のしっかりしたカリキュラムで、クルマづくりをゼロから全て教えてもらうことができました。学校と企業との距離も近く、先生や企業の講師の方からアドバイスをもらいながら、業界で求められている人物像を普段から意識できていたのだと思います。 あとは、1つの校舎に色々な業種を目指す学生がいて、卒業制作・発表展や進級制作展で接点ができたというのも在学中の良い思い出です。これからの仕事でも、自動運転など新しいクルマをつくっていくためには、自分の分野にこだわらず、他の分野の人たちとも繋がりを持つことが必要だと思います。 将来のクルマづくりのために、楽しみながら挑戦していきたいですね。
HAL卒業後、カーモデラーとして日産自動車株式会社へ入社。電気自動車やコンセプトカーなどのデザイン開発で経験を積んだ。現在は日産の高級車ブランド「インフィニティ」のデザイン開発部署に所属し、近い未来に発表されるクルマの開発に携わっている。
日産自動車株式会社
1933年設立の自動車メーカー。日本を含む世界15の国や地域に生産拠点を持ち、170以上の国や地域で商品・サービスを提供。「スカイライン」「GT-R」「フェアレディZ」などの名車で知られ、国外では高級車ブランドとして「インフィニティ」の展開も行っている。