GAME
2019.5.28
在学中に制作したゲームが今につながっている 夢が広がるインディーゲームの世界
藤井 知晴
ゲーム制作学科(現:ゲーム4年制学科 ゲーム制作コース)/2007年卒業
インディーゲームの祭典で世界NO.1に輝く
『東京ゲームショウ2018』において、ゲーム開発者に新しいアイディアをプレゼンテーションする『センス・オブ・ワンダーナイト』。そこで、世界各国300作品以上のインディーゲームの中でグランプリにあたる「Grand Audience Award」と「Best Art Award」「Best Presentation Award」の3冠に輝いた「RPGタイム!~ライトの伝説~」(以下、「RPGタイム!」)を開発したのが、藤井さんだ。 その後も中国の『厦門国際アニメマンガフェスティバル』最優秀ゲーム金賞、『TOKYO SANDBOX 2019』ベストゲーム賞受賞など、快進撃を続けるゲームファン注目のインディーゲームとなった。
「RPGタイム!~ライトの伝説~」
ゲームが大好きな小学生ケンタくんの手づくりゲームがコンセプトのRPG。 舞台は小学校の教室。下校時間になるまでに、ケンタくんの手づくりゲーム「ライトの伝説」をクリアすることがゲームの目的だ。鉛筆画のアニメーションと小学生らしいギミックが斬新な作品。放課後の教室でゲームごっこをしているような懐かしさも感じさせる。
きっかけは『日本ゲーム大賞』HALの同級生と今も開発をつづける
インディーゲームとは「Independent game」(独立系ゲーム)の略で、個人や小規模の開発チームなどによってつくられたゲームタイトルのこと。SteamやNintendo Switchなど各種プラットフォームでダウンロード配信・販売が可能で、その市場規模は拡大を続けている。なかでも、アメリカのトビー・フォックス氏が、日本ゲーム「MOTHERシリーズ」などに影響を受け開発したタイトル「UNDERTALE」が有名だ。 藤井さんはHAL卒業後、大手ゲームメーカーでプレイステーション向けソフトなど、数々の著名タイトルの開発を経て、インディーゲーム開発チーム「DESK WORKS」を設立。HALの同級生である南場元樹さんと「RPGタイム!」を開発している。 「RPGタイム!」開発のきっかけは、HAL在学中に制作した作品「バトルクエスト」で『日本ゲーム大賞2007アマチュア部門』大賞を受賞したこと。当時のチームメンバー3人は全員プランナー。他のゲームよりもグラフィックスや技術面でずば抜けていた訳ではなかったが、斬新なアイディアとそのつくり込みが評価されての大賞受賞となった。
「バトルクエスト」
教室、机、鉛筆、そしてノート。机に向かい合わせて始まる手作りの大冒険。少年がノートに書きとめた落書が、ゲームの世界に。鉛筆で書かれたコミック風のゲーム画面は、消しゴムで落とし穴が出現したり、突如、鉛筆が登場し、はしごが画面に現れるなど、ゲームの楽しさを増す変化がいっぱい。更には、モンスターとのバトルやアイテム収集など。ページをめくるたびにワクワク、ドキドキする奇想天外なストーリー。でもどこか懐かしさと温かみを感じさせる作品。
『日本ゲーム大賞2007』の受賞コメントで藤井さんはこんなことを言っていた。 「バトルクエスト」は、ゲームプランナー志望の学生3人が中心となって制作いたしました。(中略)頭の中で出来上がっていったアイディア満載のゲームを、それぞれが周りの多くの方々に協力していただきながら1つ1つ画面に移していき、なんとか遊べる形にまで制作できたことを誇りに思います。 こうしてつくり上げていった机の上の世界観は、まだまだ発展途上で、手を加えれば加えるだけ面白いものになっていく確信があり、またどこかで続きをつくっていける日を思って、更にアイディアを膨らませています。」 この言葉通り、藤井さんたちは、そこから構想11年以上、制作期間6年をかけて「バトルクエスト」の世界観を発展させ、「RPGタイム!」を発表することになる。 2018年に日本最大級のインディーゲームの祭典『BitSummit Volume 6』で「RPGタイム!」を初めて発表して以降、数々のイベント・コンテストで次々に賞を獲得。 『日本ゲーム大賞2007』で得た手ごたえは確信となりつつある。
HALで在校生に向けて特別講義「インディーゲーム開発の面白さについて」
そんな藤井さんがHALの後輩たちに向けて講義をしてくれた。ゲーム業界で独自の道を突き進む藤井さんならではの講義となった。
1.インディーゲームのすゝめ
「作品動画を比較すると明白だが、インディーゲームはメジャータイトルに比べてグラフィックスのクオリティよりも、人々の印象に残るアイディアで勝負している。インディーゲーム開発者は場所や時間を問わず好きなゲームタイトルの開発に集中できるが、ゲーム制作会社に所属するサラリーマンのような安定した収入は保証できず福利厚生もない。」と、まずはインディーゲームとメジャータイトルの違いを説明した藤井さん。 それでも、学生のうちにインディーゲーム開発者としてデビューすることをおすすめしたいという。その理由は、専業でインディーゲームに取り組むのは「ハイリスクハイリターン」だが、学生のうちなら「ローリスクハイリターン」だから。学生なら同級生同士でチームも組みやすいし、開発機やモーションキャプチャースタジオなど学校の高性能の設備を使うことができる。また、インディーゲームの交流会に積極的に参加すれば、他の開発者やメディアとつながることもできるし、企画から発売までトータルに実務経験が踏めるので、就職にも役立つと解説。
2.身近に役立つプレゼンテーション術
グランプリを受賞した『センス・オブ・ワンダーナイト』でプレゼンテーションが高く評価された藤井さん。『センス・オブ・ワンダーナイト』では、このイベントが求める最も重要なコンセプト「見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に、誰もがはっと、自分の世界が何か変わるような感覚」を意識してプレゼンテーションに臨んだそう。 「プレゼンテーションは将来何の仕事をするにしても必要な技術」としながら、その秘訣として「相手が求めるものを分析して、自分の中で相手に合う面を見極め、それをアピールすること」が重要だと教えてくれた。 また、TEDなどで人々に評価されるプレゼンテーションを見て「なぜ評価されているのか」を分析することも、効果的なプレゼンテーションのために役立っているという。 今回もHALの学生に合わせて、過去の特別講義を参考にして話す内容を考えてきてくれたそうで、渾身の資料はなんと200ページ越え。インディーゲーム開発者らしい、終始ユーモアを交えながらの講義だったが、「学生の将来のためになりたい」という熱い気持ちを感じた。 「RPGタイム!~ライトの伝説~」は現在も開発が続けられており、一般リリースは2019年夏頃の予定。公開日を待ち遠しく思っているゲームファンも多いことだろう。今後の活躍も大いに期待したい。
在学中に制作した作品「バトルクエスト」が『日本ゲーム大賞2007 アマチュア部門』で大賞を受賞。2007年にHALを卒業後、ゲーム制作会社での著名タイトルの開発を経て、インディーゲーム開発チーム「DESK WORKS」を設立。「バトルクエスト」をきっかけに、構想11年以上、制作期間6年をかけて創り上げた渾身の作品「RPGタイム!~ライトの伝説~」 は『東京ゲームショウ2018』において、世界各国300作品以上のインディーゲームの中からグランプリに選ばれた。