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『モンスターハンターX』特別企画 ヒットメーカーの方程式 Part 2 小嶋 慎太郎氏・一瀬 泰範氏が語る『モンスターハンターX』制作秘話
HAL卒業後、ゲーム業界におけるヒットメーカーとなった小嶋氏・一瀬氏に、新作『モンスターハンターX』に込めた想いからお2人のパーソナルな部分までじっくり語り合ってもらった。
『モンスターハンター X』はいかにして生まれたのか
――本作誕生のきっかけを教えてください
――積み重ねてきたナンバリングから外れた理由は?
小嶋P
ナンバリングタイトルにこだわると、今までの積み重ねがあるので、思い切った挑戦は難しい。たとえば「狩技」とか。そこでシリーズとしてやってきた積み重ねを1から見直して挑戦するために、今回は従来のナンバリングから外しました。何だったら、この「X(クロス)」もシリーズとして続けていければいいなと思っています。『ストリートファイター』にもゼロシリーズがあるように※、色々なタイトルから気に入ったものを見つけてもらえたらいいですね。
※『ストリートファイターZERO』とは 大人気対戦格闘ゲーム『ストリートファイター』のスピンオフシリーズ。「ZERO シリーズ」として好評を博した。
――狩猟スタイルや狩技といった新しいアクションが生まれた経緯は?
一瀬D
『モンスターハンター』って、ハンターの数だけ遊び方が生まれるゲームなんです。たとえば同じ武器でも、攻撃に回る人もいれば、サポートに回る人もいます。これまではプレイスタイルに合せてスキルを選んだりといった遊び方が多かったのですが、今回はそのハンターの個性や狩りのスタイルをさらに突き詰めてみようと考えました。そこで、あえて武器種は増やさずに、それぞれの武器の“可能性”を広げていく方向性を見出したのです。シリーズを通して、ずっと同じ武器を使ってくれている人もたくさんいます。そういったハンターがより深く遊べるためのシステムが4つの「狩猟スタイル」なんです。
タイトルが『モンスターハンターX(クロス)』になった理由
――タイトルはどのようにして決まったのですか?
小嶋P
「今までと違うものをどう見せるか」を考えた結果、メインモンスターを複数出すとインパクトがあるのではないかということになりました。そこから村や狩猟スタイルの数も4つでそろえることになり、そうしていろいろな新要素がクロスしていくというコンセプトから「X(クロス)」が選ばれたのです。他の案もありましたが、「X」という文字の力の強さも決め手になりました。
一瀬D
「従来だとメインモンスターは1体だけなので、わかりやすい男前にする必要があり、定型的にデザインが決まってしまうんです。今回は4体なので、それぞれにキャラ付けができますし、より尖った個性を持たせることができました。それに「四天王」という言葉も使いたかった。男子はテンションが上がる単語ですよね(笑)。
――ゲーム制作において、プロデューサーとディレクターにはどんな役割があるのでしょうか。
小嶋P
プロデューサーはプロジェクトを最後まで見守り、どうすれば広く認知され、お客さんのテンションを上げられるのかを考える仕事です。売れるコンセプトを考えて、ディレクターに要望を投げることもあります。ゲームの内容にどこまで踏み込むのかはプロデューサーにもよりますが、そこは介入しすぎないようにしています。
一瀬D
ディレクターは実際にゲームをつくる立場です。プロデューサーから渡されたお題を実際に要素として組み込み、ゲーム全体を仕上げていきます。今作の場合は「お祭り感」のほかに「想定ターゲットは全部」というものすごい要望がありました(笑)。『モンハン』も最初はアクション好きのユーザや学生などターゲットが明確でしたが、最近はすべての層に遊んでいただいていますからね。ですので、今作では何かしら引っかかりを持てるような要素を色々と仕込んでいます。
――スタッフの人選はどうしているのですか?
小嶋P
まずはコアメンバーを集めて、少数精鋭で企画を練っていきます。内容が決まってきたら、各部署と調整しつつ必要なメンバーを追加していくという流れです。
一瀬D
『モンハン』の場合、開発メンバーだけで最高100人超えはしますね。外注企業やPR、営業、コラボ担当者など含めると数百人レベルに達します。
チャンスがくるかどうかは運。やってきたチャンスをつかむのは実力。
――お2人がHALで学んだことは何でしょうか。
小嶋P
20年たった今となってはすべてが仕事に生きているなと感じますね。先生や仲間にも恵まれましたし。
一瀬D
僕らも、色々と学生のときはやったよね。東京ゲームショウにも遊びに行ったりと、ゲームの現場には興味を持って参加していた。
小嶋P
そういうところも含めて自分たちでアクションを起こすのって大事だと思うんですよ。たくさん遊んだし、たくさん映画も見たし、たくさん勉強もした。それが今につながってるなと感じます。
――お2人がほしい人材像とは?
一瀬D
元気があり、健康であることが第一!それから、協調性があるのは当然のこととして、夢を語れる人と一緒に働きたいです。
小嶋P
「これが好きなんだ」「これがつくりたいんだ」という気持ちは常に持っていてほしいです。
――クリエイターを目指す方にアドバイスをいただけますか。
一瀬D
受け身の姿勢ではダメ。どんどん質問して、教えてもらいに行ってください。
小嶋P
チャンスがくるかどうかは運によるところが大きいですが、いざチャンスが巡ってきたときにそれを確実につかむためには実力が必要です。結局、将来がどうなるかは自分次第。自分の人生に対して言い訳はしてほしくないですね。
小嶋氏・一瀬氏からのメッセージは、カプコンの『モンスターハンターX』公式サイトでも読むことができます。
ヒットメーカー説明書
小嶋 慎太郎 氏 (1998年 マルチメディア学科(現:ゲーム企画学科)卒業)
Q1初めてゲームをプレイしたのは何のタイトル? A1『きこりの与作』(カセットビジョン版) Q2仕事のアイディアはどんな時、どんな場所で思いつきますか? A2仕事中でもプライベートでもいつでも Q3HAL在学中はどのような学生生活を送っていましたか? A3悪ふざけしていました Q4学生時代に戻れるとしたら、何をしますか? A4もっと真剣に遊ぶ Q5今、1つだけ願いがかなうとしたら、何をお願いしますか? A5ゲームのテーマパークをつくりたい
一瀬 泰範 氏 (1998年 マルチメディア学科(現:ゲーム企画学科)卒業)
Q1初めてゲームをプレイしたのは何のタイトル? A1小学校1年か2年のときの『マリオブラザーズ』(ファミリーコンピュータ版) Q2仕事のアイディアはどんな時、どんな場所で思いつきますか? A2経験=アイディア Q3HAL在学中はどのような学生生活を送っていましたか? A3寺田先生(現:学校法人モード学園理事)のもと、厳しい授業を受けておりました Q4学生時代に戻れるとしたら、何をしますか? A4もう少しちゃんと勉強しておくかな Q5今、1つだけ願いがかなうとしたら、何をお願いしますか? A5桜井政博さん(有限会社ソラ代表/ゲームクリエイター)からゲームのつくり方の話が聞きたい
※卒業生会報誌「HALLO」69号(2015年11月発刊)掲載記事
小嶋P
ファンの皆さんに支えられながら、『モンスターハンター』シリーズが10 周年を迎え、何か新しいアプローチはできないかと考えました。そこで、この10年の総集編であり、且つお祭り感がある『モンハン』を出したいというところからプロジェクトがスタートしました。