GAME

2023.11.30

HALで学んだ先に、ゲームで世界を湧かす今がある

  • 内藤 貴夫

    株式会社カプコン UIプログラマー

    ゲーム制作学科(現:ゲーム4年制学科 ゲーム制作コース)/2014年卒業

  • 寺山 善也

    株式会社カプコン コンポーザー(作曲家)

    ミュージック学科/2014年卒業

多彩な経験が自信を育んでくれた学生時代

内藤

『ストリートファイター6』ではUIのプログラミングに携わっていました。現在は、新たなゲームの開発に取り組んでいます。

寺山

私は、『ストリートファイター6』ではコンポーザー(作曲家)として、ゲームのキャラクターひとり一人のテーマ音楽を作曲しました。現在は、引き続き同ゲームがアップデートされるたびに新たに登場するキャラクターのための音楽をつくっています。

内藤

HALの学びで今、役立っていることは、何度も取り組んだグループワークですね。スキルや個性の異なる学生同士でチームを組んでゲームを開発する際に、どう皆をまとめていくか、よく悩みました。その点は、大いに訓練されたので、現在の職場でも活きています。

寺山

学生時代に先生からアルバイトなど「なんでもやってみなさい」と多彩な経験を勧められました。おかげで視野が広がりアイディアの引き出しが増えたと同時に、「やればできる」という自信が培われ、物おじせずに新しいことに挑戦できる自分が形成されましたね。

  • STREET FIGHTER6

カプコンより2023年6月2日発売の対戦型格闘ゲーム。 対戦格闘ゲーム最高峰のモード「Fighting Ground」、シングルプレイヤー没入型ストーリーモード「World Tour」、世界中のプレイヤーとつながる「BATTLE HUB」といった、対戦格闘のジャンルを再定義する3つのモードを搭載。プレイヤーのスキルにあわせたストリートを歩むことで、己の強さをとことん追求できる仕上がりになっている。

人の心をつかんで離さない演出を搭載

内藤

『ストリートファイター6』のファイティンググラウンドというモードにおいて、対戦ゲームに入る前に表示されるトップ画面のUIを私が担当しました。戦闘前にユーザの心をつかむ必要がある重要な画面です。そこに寺山くんがつくったBGMが流れると同時に、現れるのはプロジェクションマッピング風な演出が入る3Dモデルのシャッターです。この見せ場をドラマティックかつアンダーグラウンドな世界にどう演出できるか、サウンドプログラマと演出エフェクトのVFX、作曲の寺山くん、そしてUIの私の4名で活発な議論を交わし、トライアンドエラーを繰り返しながら、つくり上げていったのは良い思い出です。最終的には、満足いくものができたと思っています。

寺山

格闘ゲームは、何万回も対戦したという人もいるぐらい、繰り返し遊ぶゲームなので、毎回ユーザを飽きさせず、新鮮な気持ちになれる音楽を生み出したいと思っていました。 内藤くんが話したように、ファイティンググラウンドでは彼が、ユーザが戦闘前に待機する動線を3つつくってくれました。そこで、私は音楽を3曲用意。画面が切り替わるたびにランダムに流れるような演出を実現、ユーザを常にワクワクさせるような工夫をふんだんに盛り込みました。

高みを目指す深い探求心がプロとしての成長

内藤

ゲーム制作は皆で目指す理想はありつつも、どうしても制御が必要なのが悩ましいところ。ユーザにストレスがかからないインターフェイスを構築しながらも、熱狂させるビジュアルや気分を駆り立てるBGMなど多彩な演出への飽くなき探究も大切で、どこで折り合いをつけるか悩みます。しかし、『ストリートファイター6』の制作過程において知見が深まったこともあり、次第にやれるだけやってみようといった意識が芽生えてきました。高みを目指す欲や探究心がかなり強くなったのだと思います。 印象的な出来事と言えば、既にできあがっているUIの制御変更を企画から依頼されたとき。期待に応えられるか自信はなかったものの、その提案は理想的だと納得し、やるしかないと覚悟を決めました。結果、ディレクターや企画に「やるね」と褒められたときは嬉しかったですね。

ファンの熱狂がやりがい、とことん楽しませたい

寺山

キャラクター音楽を生み出す作業は、一筋縄ではいきません。たとえば、中東出身の「ラシード」というキャラクター音楽も同様でした。まず中東音楽に馴染みがないので、下調べから始まり、また中東要素だけではヒップホップがテーマである『ストリートファイター6』らしさが消えてしまう……どう融合させるか?そこで、ヒップホップと中東、ジャズの3ジャンルを合せてみたところ、いい感じに仕上がりました。 毎回、プレッシャーを感じながらも、挑戦心と想像力を駆使してつくっていますが、そんな中、嬉しいことが起こりました。数千人もの観客が集まるリアルの格闘ゲーム大会では、プレイヤーがキャラクターを選択する演出が披露されます。ある大会で、『ストリートファイター6』のあるキャラクターが入場した瞬間、熱い叫び声で歌われる曲が流れた、と同時に観客全員がその曲を歌い始めたのです。私が作曲した曲でした。それは、めったに起きることではなく、私の夢でした。その場にいたので感動もひとしおでしたね。 あるコアなファンの方が、キャラクターの曲を聴いて「かっこいい!」と選んでくれたときもテンションが上がりましたね。キャラクターを選ぶ条件として、強さはもちろんですが曲にも惹かれて、というのは作曲家冥利に尽きます。 HAL卒業時に先生が送ってくれた手紙を思い出します。綴られていたのは「音楽は、所詮娯楽でしかない。人間が生きる上で不可欠なものではないが、だからこそ、人をとことん楽しませることに本気になれ」という言葉。今でも胸に刻まれていて、常に人をとことん楽しませるといった頑固なまでのこだわりや「妥協を知らないクリエイター魂」を養ってくれたと感謝しています。

内藤 貴夫

株式会社カプコン UIプログラマー

ゲーム制作学科(現:ゲーム4年制学科 ゲーム制作コース)/2014年卒業

小学生のころ、ゲーム好きが高じ将来はゲームクリエイターになりたいという夢を持つ。CMで知ったHALには当時から入学を決意。2014年HALを卒業後、格闘ゲームが好きなことからカプコンに興味を持ち入社。『マーベル VS. カプコン:インフィニット』『ストリートファイター6』などのタイトルでUI(ユーザーインターフェイス)プログラマーとして制作に携わる。

寺山 善也

株式会社カプコン コンポーザー(作曲家)

ミュージック学科/2014年卒業

高校時代からバンド活動にいそしむなどの音楽好きから、きちんと音楽を勉強したいと思い立ち、DTM(デスクトップミュージック)を学べるHALに入学。入学後、好きなゲームやパソコンに関われる音楽の仕事をしたいと、ゲーム音楽をつくるコンポーザーを目指す。カプコンのゲームが好きで2014年入社。『デビル メイ クライ5』『ストリートファイター6』のコンポーザー(作曲家)としてキャラクター音楽を手掛ける。

代表作

寺山善也さんがコンポーザーとして携わった『デビル メイ クライ5』

株式会社カプコン

日本屈指のゲームソフトメーカー。『ストリートファイター』、『バイオハザード』、『モンスターハンター』など、キャラクターやストーリー、世界観、音楽に至るまで、その高いクオリティは世界中で評価されている。